マンション

side…光

 

 

今日は組長の側近である
田代さんに呼ばれた宴席

 

繁華街の裏の割烹へ
龍夜と共に出向けば

 

組長に苦笑いで迎えられた

 

 

そして部屋中
噎せ返るような香水の匂い

 

眉を顰める龍夜の視線を辿れば
傘下の組の組長とその娘

 

やたらと厚化粧の顔に
笑顔をはりつけるこいつが
悪臭の原因か

 

 

気が付く女と思われたいのか
組長や龍夜にお酌をしてまわり
最終的に龍夜の横に擦り寄って行った

 

 

 

ヤバイなぁ

 

龍夜が一番嫌いなタイプの女なんだよね

 

こっちは いつ龍夜がキレるか
気が気じゃない

 

いくら格下の傘下の娘とはいえ
組長じゃなく若頭の龍夜がキレるのはマズイ

 

 

女が擦り寄れば擦り寄るほどに
龍夜の纏うオーラがどす黒く
冷たくなっていく

 

それに気付かないのか
気にしないのかは謎だが

 

めげずに擦り寄る女は
ある意味強者だ

 

普通の女ならまず間違いなく
逃げ出すだろうに

 

そこはさすが組長の娘

 

 

本当に無駄に強かだ

 

そんな事を思ってたら
女がついに龍夜の太腿を手で摩りだした

 

誘ってるつもりなのか?
この空気でバカなのか?

 

 

龍夜の眉間の皺が…

 

そろそろキレるよなぁ
でも龍夜にしては耐えた方だし
救出するか

 

 

割烹の女将を呼んで
水を用意するように伝えた

 

この店は他に比べて個室が多く
先代から贔屓にしてるから
融通がきく事もあってよく利用してる

 

いつもは馴染みのおばちゃん店員が
料理や水を運んでくるんだけど
今日は見た事の無い
若い子がお水を運んで来てくれた

 

『お水はどちらに?』
と聞かれ
「そこのお兄さんに」
と返せば
お兄さんって柄じゃない
龍夜に睨まれたが

 

俺の意図を汲み取ったのか
水を飲みほし

 

「気分がすぐれねぇ帰らせてもらう」

 

って事で俺も
「親父 組長 申し訳ございません
失礼させていただきます
若を送りましたら一度戻りますので」
と伝え 先に部屋から出た龍夜を
追いかけようと思ったら

 

お水を持ってきた子が
お嬢に手首を捕まれて固まっていた。

 

この店のおばちゃん店員は
殆どが組に旦那がいたり
旦那が裏の事情で
一緒に住めなかったり

 

訳ありの奥さん達だから
こんな時も俺なんかの手助け無しに
軽く受け流して
やり過ごす術を持ってるんだが

 

今日の子は…新人さんか?

 

女に「若に色目使ってタダで済むと思うの」
なんて意味不明な言いがかりを囁かれ
真っ青になって固まっちゃったよ

 

チョット可哀相になり
お嬢の言葉は聞こえなかったふりをして

 

「お嬢もお水ですか
若を送ったら戻りますので
お酌させていただこうと思ったんですが」
と微笑めば

 

「お水はいいわ 若様にお大事に
何か必要な物があれば
お届けしますとお伝え下さい」

 

「ありがとうございます
伝えさせていただきます
あっ お姉さん
お土産を頼みたいんだけどいいかな」
親父さん達頭を下げつつ
可哀想な女の子を
部屋の外に連れ出した

 

部屋を出て
廊下の先にある待合のベンチで
龍夜がタバコを吸いながら
不愉快そうに座っていた

 

連れ出した女の子に
「大丈夫?女将呼んでくれる」
そう頼んで龍夜のもとへ行けば

 

座っている体勢のまま長い脚が
飛んできてよけ切れず
「っぶね〜ってか痛っ」と言えば

 

『あの女クサすぎて気分悪りぃ』

 

って俺悪く無くない?
全くもって理不尽な

 

女将が来たので
料理に手をつけてなかった龍夜の
夜食兼つまみになりそうな料理を頼み
停まっていた迎えの車に乗り込んだ

 

「どこに帰る?」と聞けば

 

『マンション』と言われ
最近龍夜の手がけた
マンションへ車を向かわせる

 

ってか
マンションなら車いらなくねぇ?
そう思いつつも運転する力也に
「何処につけますか 」と聞かれ
時間を確認したら
まだ22時と早かったので
裏から地下へと指示を出し
そのまま地下の駐車場で待たせる事に